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左手のピアニスト 
智内威雄(ちないたけお)さん

【プロフィール】

 

1976年埼玉県生まれ。

東京音楽大学在学中にミラノにて研鑽(けんさん)を積む。

卒業後、ドイツ国立ハノーバー音楽大学に入学、その間、グリーグ国際コンクール、マルサラ国際音楽コンクールにて入賞受賞。

2001年ジストニアが発症し休学・リハビリに専念する。

右手の演奏復帰はならなかったが、日常生活にほぼ支障をきたさないまでに回復。

2003年よりドイツにて左手のピアニストとして活動を再開。

2006年に広島交響楽団とラヴェルの「左手のための協奏曲」を共演し絶賛され、同年日本デビュー。

「左手のピアニスト」として驚異的なテクニックと深遠かつ豊かな音楽性で新境地を切り拓く。

2010年には、歴史的楽曲の復興と、片手演奏の普及を目指し「左手のアーカイブ」プロジェクトを設立。

代表を務め、コンサートやピアノの教育に力を入れ活動し、メディア各社にて取り上げられている。

【わかさ生活との出逢い】

 

ピアニストとして右手で演奏できなくなるという苦難から、左手のみでの演奏の魅力を知り、音楽の素晴らしさをたくさんの人に伝えるために積極的に活動されている智内威雄さん。

その姿にわかさ生活の社長角谷建耀知と通じるものを感じ、お客様感謝祭でぜひ演奏していただきたいとの想いから、ご出演の依頼をさせていただきました。

【インタビュー】

 

「左手のピアノを通じて音楽の素晴らしさを伝えたい! 」

 

ドイツ国立ハノーバー音楽大学在学中「局所性ジストニア」を発症し、右手での演奏ができなくなりながらも、現在は「左手のピアニスト」としてコンサートや教育活動に積極的な智内さん。

今回はその活動や現在描いている夢についてインタビューしました!

 

智内さんがピアノと出会ったのはいつごろですか?

僕の両親は、父は絵描き、母は声楽家と、少し特殊な家庭で育ちました。また母はピアノもしていたので、生まれる前からピアノが家にあったんです。物心つく頃にはすでに弾いていましたね。もはや生活の一部になっていました。

学生時代はピアノを弾いて人に喜んでもらえたり、演奏者による曲の表現を知るのが楽しくて、ひたすら練習・研究に打ち込んでいました。両親も職業柄理解があり、ピアノの道を歩んだ事も自然なことだったと思います。

 

まさにピアノは智内さんの一部なんですね。突然の局所性ジストニアという病気はどうやって乗り越えたんですか?

 

局所性ジストニアは簡単に言うと脳の誤作動の病気です。動かしたい部位が思い通りに動かせません。なんの病気かわかるまでは不安でしたが、診断された時はむしろ目標が見えて良かったと思いました。小さい頃から壁に立ち向かうのは慣れていましたしね。そこからは1日30分やればいいリハビリを6時間はしていました。

ところが、日常の動作が出来るまで回復はしたものの、演奏できるまでは戻らないとわかった時は、自分が空っぽになってしまったような感覚でかなり落ち込みましたね。それから他の楽器や声楽などにも挑戦しましたが、自分にはしっくりきませんでした。ですが恩師の支えでピアノに向き合うことができ、スクリャービンという作曲家の曲の表現力に改めて気づいたことで、左手のピアノについて調べるようになりました。

そうしていくうちに、左手の演奏で、ピアノの世界で生きていこうと決心したんです。

 

 

まさに人生の転機となった、左手で弾くピアノにはどんな魅力がありますか?

 

音楽は本来、心の回復や癒しのために必要な素晴らしいものです。左手のピアノはその事を教えてくれます。通常のピアノ演奏との違いを言えば、両手は弾ける音の数が多い分、音が濁りやすい。左手だけだと、音が少ない分、響きをコントロールしやすい。響きでの表現がより豊かになるので、聴き手に行間を読ませることが得意なんです。文章で例えるなら、両手が小説のような長文で、左手が短歌のような短文でしょうか。

素朴で深い魅力があります。

 

 

その左手のピアノの魅力を伝えるために「左手のアーカイブ」というプロジェクトを設立されていますが、どのような活動をされているんですか?

 

「左手のアーカイブ」は二つの柱があります。一つ目は左手のピアノの発掘・発展プロジェクト「レフトハンドピアノミュージック」。二つ目は教育プロジェクト「レフトハンドピアノレッスン」です。左手のピアノは本来とても歴史がある分野なのですが、忘れられ、埋もれてしまった曲がほとんどです。

そして一流の演奏家が再帰を図るために作られた曲が多かったために、初級中級からステップアップする曲がほとんどないなど、広めるためには問題が山積みでした。

そこでまずは曲を知ってもらうために、曲を音源化・映像化することからはじめました。またコンサートも開催し、世界でトップレベルの演奏家とコラボもしています。

左手の演奏は障がいがあっても頑張っている、で終わるのではなく、ひとつの芸術として、感動出来るものにしていきたい。そして、後世に繋げていくために、片手の演奏を必要としている人に届けるためにも教育プロジェクトも平行して行い、初心者をはじめとする学習者への楽曲作り、発表会の開催もしています。

 

最後に、智内さんの将来の夢を教えてください!

 

描いている夢は「左手の音楽の社会化」です。

皆さんは数ヵ月に1~2回は美容室や床屋に行きますよね。それくらい生活に浸透させたいんです。今はまだ左手での演奏は特殊ですが、近い将来には、年齢や障がいのあるなしに関わらず、誰もが気兼ねなく参加できるものとして広めていきたい。そのために普及活動をしています。

最近はピアノ教室だけではなく、鍵盤ハーモニカの教室を始めました。ピアノより手軽で、小学校で習っているこの楽器なら、気軽に参加しやすいですしね。また僕の考えとして、音楽は子どもだけではなく、お年寄りも含めた家族皆で参加して欲しいと思っています。

今習いに来ている生徒も家族で来てくれています。他にも楽譜が読めない、楽器を手にしたことがない人でも簡単に演奏できる楽器作りを計画しています。

プロにもアマチュアにも左手のピアノの魅力をしっかり伝える、それを通じて社会に音楽体験することの素晴らしさを広めていくことが、僕の使命、そして存在意義だと考えています。社会化に向けてやるべきこと、やりたいことはたくさんあるので、これからも楽しみでしょうがないです。

 

 

将来の夢を語る時の智内さんはとてもイキイキとしていて、瞳が輝いていました!感謝祭での演奏が楽しみですね。

「左手のピアノの演奏」がどんな音楽なのか、皆さんもぜひ聴きに来てください。

智内威雄さん、貴重な時間をいただきありがとうございました!

                                  (2016年4月取材)

左手のピアノ演奏の普及・演奏者のレベル向上のため、楽曲を映像化し、サイトに無料で掲載されています。

落ち着いた口調ながらも、楽しそうにプロジェクトの夢をお話ししてくださる智内さん。

ピアノを上手に弾くために大事な「力を抜くコツ」も教えていただきました♪

【CD/楽譜/著書】

 

◆ CD

「左手のアーカイブCDシリーズ」001~010

(楽曲一例:シャコンヌ・前奏曲と夜想曲・左手のための習作など)

◆ 楽譜

初級楽譜【片手のための楽譜】Vol.1~4

中級楽譜【左手のための楽譜】Vol.1~5

名曲楽譜【左手のための楽譜】Vol.1~4

◆ 著書

ピアノ、その左手の響き~歴史をつなぐピアニストの挑戦~

 

【オフィシャルHP】

 

◆ 智内 威雄さん ホームページ

     http://tchinai.com/

◆ 左手のアーカイブ ホームページ

    http://www.lefthandpianomusic.jp/

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